一言でいうと
日本が国連常任理事国になれないといわれる最大の理由は、常任理事国を増やすには国連憲章の改正が必要であり、国連加盟国の幅広い賛成に加えて、現在の常任理事国5か国すべての批准も必要だからです。
日本が常任理事国になることが制度上禁止されているわけではありません。しかし、各国の利害や国連改革に対する意見が異なるため、実現は簡単ではありません。
導入
ニュースでは、ウクライナ情勢や中東情勢などをめぐり、「国連安全保障理事会で決議案が否決された」「常任理事国が拒否権を行使した」と報じられることがあります。
こうした出来事をきっかけに、現在の国連の仕組みで国際社会の平和と安全を守れるのかという議論も続いています。
その中で日本は、安全保障理事会の常任理事国と非常任理事国を増やす国連改革を求め、自らも常任理事国になることを目指しています。日本政府は2025年にも、安全保障理事会を現在の国際社会に合った形へ改革し、常任理事国入りを目指す方針を示しています。
日本は国連の活動に資金面や人的な面で参加し、安全保障理事会の非常任理事国も繰り返し務めてきました。
それにもかかわらず、なぜ日本は常任理事国ではないのでしょうか。
その理由を理解するには、安全保障理事会の仕組みと、国連がつくられた歴史を知る必要があります。
常任理事国とは?
国連には、世界の平和と安全を維持することについて中心的な責任を持つ「安全保障理事会」があります。
安全保障理事会は、英語名の「United Nations Security Council」から「安保理」と略されることもあります。
現在の安全保障理事会は、常に議席を持つ5か国の常任理事国と、任期2年で選ばれる10か国の非常任理事国によって構成されています。
常任理事国は、次の5か国です。
・アメリカ
・イギリス
・フランス
・中国
・ロシア
この5か国は、国連が創設された当初から安全保障理事会で特別な地位を持っている国々です。現在の国連憲章でも、安全保障理事会は15か国で構成され、そのうち5か国を常任理事国とすることが定められています。
常任理事国の大きな特徴が「拒否権」です。
安全保障理事会が制裁や武力行使などに関わる重要な決定を行う際、常任理事国のうち1か国でも反対すると、必要な賛成数を満たしていても決議案が成立しないことがあります。
そのため、常任理事国は国際的な紛争や安全保障問題について、非常に大きな影響力を持っています。
ただし、「国連のすべてを常任理事国だけで決めている」というわけではありません。国連総会をはじめ、ほかの機関では異なる意思決定の仕組みが採用されています。
なぜ日本は常任理事国ではないの?
日本が常任理事国ではない理由は、現在の国連が第二次世界大戦の終結前後につくられたことと関係しています。
国連は、第二次世界大戦のような大規模な戦争を再び起こさないことを大きな目的として、1945年に発足しました。
現在の常任理事国は、国連の創設を主導し、第二次世界大戦で連合国側の中心となった国々を基礎としています。
一方、日本は第二次世界大戦で連合国と戦った側にあり、国連が創設された1945年の時点では加盟国ではありませんでした。
日本が国連に加盟したのは、戦後の1956年です。国連総会は同年、日本の加盟を認める決議を採択しました。
つまり、現在の常任理事国制度は、日本が国連に加盟するより前につくられたものです。
日本が経済成長を遂げ、国際社会で担う役割が大きくなった後も、常任理事国の構成は基本的に変わっていません。
ただし、安全保障理事会の人数がまったく変更されていないわけではありません。
1960年代には国連憲章が改正され、安全保障理事会の議席数が11か国から15か国へ増やされました。しかし、このとき増えたのは非常任理事国の議席であり、常任理事国は5か国のままでした。
そのため、現在の国際社会の国数や地域構成が、常任理事国の顔ぶれに十分反映されていないのではないかという意見があります。
日本は常任理事国になれないの?
日本が常任理事国になることは、制度上不可能と決められているわけではありません。
しかし、新しい常任理事国を加えるためには、安全保障理事会の構成を定めている国連憲章を改正する必要があります。
国連憲章第108条では、憲章を改正するために、まず国連総会で全加盟国の3分の2以上の賛成を得ることが必要とされています。
それだけではありません。
改正を実際に発効させるには、全加盟国の3分の2以上がそれぞれの国内手続きに従って批准しなければならず、その中には現在の常任理事国5か国すべてが含まれていなければなりません。
つまり、日本が常任理事国になるためには、多くの国から支持を得るだけでなく、アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアのすべてが国連憲章の改正を批准する必要があります。
また、国連改革をめぐっては、どの国を新たな常任理事国にするのか、地域ごとの議席をどう配分するのか、新しい常任理事国にも拒否権を認めるのかなど、さまざまな論点があります。
日本の常任理事国入りに対する各国の考え方も同じではありません。
そのため、日本だけの努力で決められる問題ではなく、国連加盟国全体の合意形成が必要になります。
「日本は常任理事国になれない」というよりも、「常任理事国になるための制度的・外交的なハードルが非常に高い」と表現する方が正確です。
なぜ日本は常任理事国入りを目指しているの?
日本が常任理事国入りを目指す理由の一つは、国際社会の平和と安全に関する意思決定へ、より継続的に関わるためです。
非常任理事国の任期は2年間ですが、常任理事国には任期がありません。
日本はこれまで、安全保障理事会の非常任理事国に繰り返し選ばれてきました。2023年から2024年にも非常任理事国を務め、国際的な紛争や核軍縮、平和構築などの議論に参加しました。
しかし、任期を終えると安全保障理事会の議席を離れることになります。
常任理事国になれば、安全保障理事会の意思決定に継続して参加できるため、日本の外交上の発言力も大きくなると考えられています。
また、日本は長年にわたり国連の活動をさまざまな形で支えてきました。
例えば、国連の通常予算の分担金を負担しているほか、平和構築や人道支援、難民支援、開発援助など、多くの国連機関や事業に資金を拠出しています。
さらに、自衛隊によるPKO(国連平和維持活動)への参加や、災害復興支援、開発途上国への技術協力なども行ってきました。
こうした実績を踏まえ、日本は「現在の国際社会における役割に見合った形で、安全保障理事会の構成も見直すべきではないか」と考えています。
一方で、日本だけが常任理事国入りを目指しているわけではありません。
ドイツ、インド、ブラジルも日本とともに「G4」と呼ばれる枠組みをつくり、安全保障理事会の改革と常任理事国の拡大を訴えています。
しかし、新たな常任理事国を増やすことに慎重な国もあり、どの国を加えるのか、地域間のバランスをどう取るのかなど、意見が一致していません。
そのため、日本の常任理事国入りは、日本だけの問題ではなく、「国連改革全体」の議論の一部として話し合われています。
私たちの生活との関係
「国連の常任理事国」と聞くと、私たちの生活とは遠い話のように感じるかもしれません。
しかし、国連安全保障理事会で話し合われる内容は、私たちの暮らしにも影響することがあります。
例えば、国際紛争が長引けば、原油や天然ガスなどのエネルギー価格が上昇し、日本でもガソリン代や電気料金、食品価格などが変動する可能性があります。
また、安全保障理事会が経済制裁を決定した場合、世界の物流や企業活動に影響が及び、日本企業や私たちの生活にも間接的な影響が生じることがあります。
さらに、日本が国連でどのような役割を果たすかは、日本の外交や国際的な信頼にも関わります。
ニュースで「安全保障理事会」「拒否権」「国連改革」といった言葉を見かけたときには、「日本はどのような立場で議論に参加しているのか」という視点で見ると、ニュースの背景がより理解しやすくなるでしょう。
このテーマから広がる疑問
「なぜ日本は国連常任理事国になれないの?」という疑問から、国連や国際政治の仕組みについてさらに知りたくなる人もいるでしょう。
まず、「国連とは?」を読むと、国連がどのような目的で設立され、どのような活動を行っているのかを理解できます。
また、「安全保障理事会とは?」では、安全保障理事会の役割や、なぜ国際紛争で重要な存在なのかを詳しく知ることができます。
「常任理事国とは?」や「拒否権とは?」も、このテーマを理解するうえで欠かせない用語です。
さらに、「PKOとは?」を読むと、日本が国連の平和維持活動にどのように参加しているのかが分かります。
あわせて、「国連は戦争を止められないの?」「なぜ国連加盟国なのに戦争できるの?」「国際法があるのになぜ戦争は起きるの?」といった疑問も、このテーマと深く関係しています。
これらの記事を読むことで、国連の役割や限界、日本と国際社会との関わりをより立体的に理解できるでしょう。
まとめ
日本が国連常任理事国ではないのは、日本が国連創設時の常任理事国ではなかったこと、そして常任理事国を増やすには国連憲章の改正が必要であることが大きな理由です。
日本は国際社会への資金面・人的な貢献を続け、安全保障理事会の非常任理事国も繰り返し務めてきました。そのため、日本政府は現在も国連改革の一環として常任理事国入りを目指しています。
しかし、その実現には国連加盟国の幅広い賛成だけでなく、現在の常任理事国5か国すべての批准が必要です。さらに、新たな常任理事国の選び方や拒否権の扱いなどについても各国の意見が分かれており、改革は簡単には進んでいません。
そのため、「日本は常任理事国になれない」と考えるよりも、「制度上は可能だが、国際社会全体の合意が必要なため実現のハードルが高い」と理解することが大切です。
ニュースで「国連改革」や「安全保障理事会」が話題になった際には、「なぜ改革が必要とされているのか」「日本はどのような立場で議論に参加しているのか」という視点で見ることで、国際ニュースをより深く理解できるようになるでしょう。


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